私が初めて星愛美と会ったのは2019年の10月だった。それ以来、彼女とは足掛け7年の付き合いになる。その時すでに愛美さんは53歳であり、全国を巡業するストリッパーでは日本最高齢だった。その身体能力の凄さと「星組」と呼ばれる熱心な愛美ファンとの関係に、自分がこれまで知らなかったストリップの世界の奥深さを感じた。愛美さんとファンとの間にはいったい何があるのか?そのことを4回続いてきたこのシリーズで、ずっと探り続け来た。
実はその答えは、シリーズの3回目までで答えが出ている。それは、星愛美と彼女を支えるファンとの深い絆だった。星愛美のステージを見ることで感動し、過酷な人生を抱えながらも、生きる意欲を獲得していくファン達。そうした人たちからの喝采を命の糧として、そのファンの為に、年齢による衰えや長年酷使した身体の痛みと闘い、がんをも克服してステージに向かう星愛美。愛美さんとファンとの絆には、生きるという事に立ち向かうための言わばエネルギー交換が存在していた。
しかし、シリーズ4作目を制作するにあたって、どうもそれだけでは無いのではないかと思い始めた。「自分の為に生きることは、他人の為に生きることである」という事をテーマに描いてきたつもりだが、そのままこれで終わらせてしまっていいのか…という事が、今回の大きな制作意図だった。
58歳になった愛美さんは、抗がん剤治療を止めてステージに命を預けた。抗がん剤の為に、免疫力も落ち、身体が弱り切ってステージに立てないまま、死んでしまう事に耐えられなかったのだ。
「私は棺桶に入る時も裸で入りたい」
と、言い切った。
ストリッパーという職業に拘る星愛美のその潔さはどこから生まれるのか?
まさに自らの限界と闘うようにステージに立つことに拘り続けるストリッパー星愛美。そんな星愛美のステージにファン達は何を見に来るのか。それは「裸」ではなく、まさしく星愛美の「魂」だった。
だとするとストリップは星愛美にとって「天職」と言ってもいいのではないか。星愛美はまさに天職に命を全うしようとしている。そこには、これまでの彼女が味わった悲惨な人生をチャラにする「幸せ」が見えてこないだろうか。